2025.10.31
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【連載・第4回】賀数仁然さんと巡る沖縄の世界遺産~築城の天才・護佐丸の集大成「中城城跡」~

沖縄には世界に誇る9つの世界文化遺産があり、約450年にわたり築き上げられた琉球王国の歴史背景や文化に触れることができます。おなじみの琉球歴史家・賀数 仁然(かかず ひとさ)さんガイドのもと沖縄の世界遺産を巡る連載シリーズ!2026年の首里城復興に向けて、全8回に渡りお届けします。

第4回は、築城の名手として現代でも愛される護佐丸(ごさまる)が遺した「中城城跡(なかぐすくじょうあと)」を訪れました。今回も、仁然さんならではの豆知識たっぷりで、グスクの見どころをご案内します!

今回の案内人

賀数 仁然(かかず ひとさ)さん

那覇市出身。琉球大学非常勤講師を経て沖縄大学地域研究所特別研究員。
沖縄の歴史文化をエンタメとして発信。琉球歴史ドラマ、ドキュメンタリー、映画、舞台などの脚本・監修など幅広く手掛ける。所長を勤める「クボウグランデ」の歴史ツアーも好評。著書『さきがけ!歴男塾』の最新・4巻が発売中!

護佐丸の本領発揮!築城技術てんこ盛りの中城城

15世紀に築かれた中城城は、首里城に匹敵するほどの巨大な城郭。海を一望できる高台にあり、美しい石積み技術で“日本100名城”にも選ばれています。
首里城と勝連城の中間地点に位置し、当時の琉球王国の防衛拠点を担っていました。のちに勝連城主・阿麻和利(あまわり)による護佐丸討伐の舞台にもなったグスクです。

護佐丸が築いたのは「三の郭」「北の郭」の一部で、それ以外の部分は、以前統治していた先 中城按司(さき なかぐすくあじ)が造った構造だと考えられています。そのため、城の石積みには複数の手法が見られ、単純に石を積みあげる最古の「野面(のづら)積み」、四角い石を積む「布積み」、護佐丸時代の新しい技術・多角形に加工した石を互いに噛み合うように積む「相方(あいかた)積み」が混在する珍しいグスクです。

■穴場な見どころ:首里と勝連をつなぐ「ハンタ道」

1400年代、勝連城の按司・阿麻和利の勢力が増し、首里王府は彼を牽制し始めました。
当時の尚泰久(しょうたいきゅう)王は、北山陥落での功績から絶大な信頼をおく護佐丸に、座喜味城から中城城への転領を命じます。

中城城は、首里と勝連を結ぶ「ハンタ道(崖沿いの道)」の中間に位置するため、もし勝連軍が首里を攻める場合は中城城を倒さなければならず、武勇に優れた護佐丸の中城転領阿麻和利を牽制する大きな効果がありました。

<知ってた?RYUKYU豆知識>

二重構造になっていた⁉「一の郭」の城壁

今から5年ほど前、崩れた城壁の下から、護佐丸以前の時代の石積みが発見され、城壁が“新旧の二重構造”なっていることがわかりました。積み増しされた外側部分は護佐丸が増設したものと見られ、なんとも珍しい二重の城壁を見学することができます。

<仁然さん>城石の材料となる「琉球石灰岩」は、もともとは真っ白(写真の右上あたり)!
時間の経過と共に、カビなどによって黒ずみ、灰色の城石に変化していきます。首里城の城壁も、最初はぜんぶ白かったんですよ~。

ペリーも驚いた!中城城のすばらしき築城技術

19世紀にはペリーが来島し、編成した調査隊が中城城を訪れ調査を行っています。モルタルを使わず、石を積んだだけで400年以上経っても崩れない高度な技術にペリーは驚嘆したそう!

護佐丸が増築した東側の「裏門」は、座喜味グスク同様の美しいアーチ構造。入口にはおなじみの階段を備えて、防御対策もバッチリです。座喜味城ではアーチの中央にクサビを打って石積みを支えていましたが、中城城はクサビなし型にバージョンアップしています。

<仁然さん>このアーチ門は、建設当時から600年くらい経っていますが今なお堅牢性を保っています。座喜味城でうまくいった技術は再度取り入れて、苦労を成功に変える…これが護佐丸のすごさです!

<知ってた?RYUKYU豆知識>

隅頭石(すみからいし)

城壁の角石をツノのように立てる琉球のグスクならではの石積みの手法です。

<仁然さん>なぜ尖っているかって?…それはズバリ “かっこいい”から!見た目の威圧感を出すためや、魔除けの意味もあったと言われています。

■穴場な見どころ「大井戸(ウフガー)」

中城城には、護佐丸ならではの高度な築城技術が随所に見られます。特に「相方積み」は護佐丸の時代に完成した技術で、これによって高くて複雑な石積みが可能になりました。

北の郭にある「ウフガー」には15メートルほどの深さから大きな泉が湧いており、城の生活を支えました。外部に排水するための地下水路として暗渠(あんきょ)が作られ、外から敵に気づかれないよう巧妙に隠されていました。座喜味城には水源がなく苦労したので、当時の反省を最新の積み方を用いてクリアしたんですね。
また、中城城の石積みは風を逃がす堅牢(けんろう)な構造になっており、高く積まれた城壁が強風に耐えられる工夫もなされています。

琉球史最大のミステリー「護佐丸と阿麻和利の乱」勃発!

1458年、中城城は琉球の歴史が動く出来事の舞台となります。

ある時、阿麻和利は船で迂回し知念半島を経て首里城に向かい、尚泰久王「護佐丸が謀反を企てています。気を付けた方がいいですよ」嘘の情報を伝えたのです。恐れた尚泰久は中城城に密偵を送り、調査させます。

一方で、阿麻和利を牽制(けんせい)すべく、広場で軍事訓練にはげむ護佐丸軍。その様子を見た密偵は「本当に謀反を企んでいる…!」勘違いし、そのまま王に報告しました。これに慌てた尚泰久は、阿麻和利に首里軍とともに中城への攻城を命じました。

これが「護佐丸・阿麻和利の乱」の始まりです。

 ~まるわかり!中城城ヒストリー「護佐丸・阿麻和利の乱」~

阿麻和利は旧暦の8月15日、護佐丸が十五夜のお月見会を開いている隙を狙って、首里軍とともに中城城を包囲しました。

首里軍の旗を見た護佐丸は、阿麻和利にはめられたことにすぐに気づきます
「これに応戦すると、阿麻和利の狙い通り、謀反を起こしたことになってしまう…。」護佐丸は部下たちに戦うことを禁じ、城を開け渡すよう命じました。その後、正殿で妻と長男、次男を道連れに自害したのです。

護佐丸はまだ幼かった三男の盛親(もりちか)のみ、乳母に預けて(写真参照)から降ろして逃がします。盛親は糸満方面にかくまわれて生き残り、後に金丸(尚円王)に探し出され、首里王府に仕えることとなります。その家は三司官(大臣)を輩出する名家となりました。

<仁然さん>のちに名家を生み出す三男坊・盛親を逃がしていなければ、護佐丸の継承者は滅亡し、その後の琉球の歴史も変わっていたことでしょう。

<知ってた?RYUKYU豆知識>

琉球は日本より100年も前から銃を使いこなしていた⁉

西側(首里城方面)の城壁には2か所(写真左/正門)、東側(勝連城方面)の城壁にはひとつの(写真右/北の郭)が開いています。
これは「三眼銃(さんがんじゅう)」という鉄砲を使うための狭間(さま)だと言われています。(三眼銃の実物は沖縄県立博物館に展示されています)

写真:沖縄県立博物館・美術館収蔵

1458年に琉球は中国伝来の銃をいち早く取り入れていて、これは日本への鉄砲伝来(1543年・種子島伝来)より約100年も早いことになります。
護佐丸はすでに鉄砲を保持していましたが、謀反の疑いをかけられないよう、そして部下を守るために戦いに応じず、最期は自害を選んだんですね。

■穴場な見どころ「護佐丸の墓」

中城城からほど近い場所に「護佐丸の墓」があります。眺望のよい山の斜面に静かにそびえたち、“沖縄最古の亀甲墓”としても知られています。
没後も謀反を疑われ続けていた護佐丸でしたが、金丸が第二尚氏・尚円王となった時代に、王府で仕える子息・盛親以降の子孫の功績が認められ、18世紀に王府によって墓が建てられました
のちに組踊の演舞「二童敵討(にどうてきうち)」といった作品も出始めて、“忠臣・護佐丸”として、現代にわたり伝わります。

琉球史最大の謎とも言われる「護佐丸・阿麻和利の乱」
次回・第5回「勝連城跡 編」で、仁然さんがその真相に迫ります!乞うご期待!!

※琉球史や神話においては所説ありますが、本記事の内容は琉球王朝の正史「球陽」といった歴史書に基づいています。
史跡巡りは、日除けと虫除け、熱中症対策を万全に、歩きやすい服装で行ってくださいね。

〈施設情報〉

中城城跡
[住所] 中頭郡中城村字泊1258番地
[観覧時間] 8:30~17:00(5月~9月は18:00まで)
[観覧料] 大人 500円、 中・高生 300円、小学生 200円(保護者同伴の未就学児は無料)
[HP] ホームページ

お支払いには、便利でおトクなau PAYがご利用になれます! 

<賀数仁然さんと巡る沖縄の世界遺産>

首里城復興応援プロジェクト「SYURI NO UTA」

沖縄セルラー電話(株)では首里城復興応援ソング「SYURI NO UTA」プロジェクトをサポートしています。

本プロジェクトは、2019年に沖縄にゆかりのあるアーティストが集結し、首里城復興を願う大人から子どもまでみんなが⼝ずさむような、素敵な歌をつくりたいという想いから始まりました。

大切なのは、忘れない心。
そして、伝え続ける勇気。
沖縄県内のみならず、日本中・世界中の方へ「SYURI NO UTA」と首里城復興への想いが届くことを願っています。

「SYURI NO UTA」特設ページ
詳しくはコチラ

 

企画・編集:Laifue編集部
文:花城 綾子
撮影:小橋川 恵里奈

 

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